久々ボスの声です。
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我らがmygunnerさんがTwitterで投稿してくださった、レディオ番組でのボス退任後初のロングインタビュー。
(football.london)
ボス節全開の、実に興味深い内容だったので紹介させていただきます(mygunnerさん、いつもありがとうございます!)。
それでは、どうぞご覧ください。
以下、RTLラジオ“What If?”でのヴェンゲルさんインタビュー抜粋。
長いので分割します。ホストはクリスティーヌ・ケリー。以降”K“
— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
K:もしも仏大統領だったらどんな法案を通しますか?
ヴェンゲル: フランス中の全ての学校でサッカーを必修科目にする。(footballlondon)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
K: 人生で消し去りたい瞬間は?
ヴェンゲル: 全ての敗戦。
K: そんなにないでしょう?
ヴェンゲル: 想像以上にある。一つ一つが人生の傷で、失望として永遠に残る。
(footballlondon)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
K: 究極の夢は?
ヴェンゲル: チームが調和のとれた卓越性を持って1試合フルにプレーすることだろうか。試合中、全選手がぴったりと同じ波長でプレーする。極めて稀だが、そういう瞬間には苦労が報われたと感じる。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
K: 最大の過ちは?
ヴェンゲル: 同じクラブに22年間居続けたことだろう。私自身は動き回るのが好きな人間だが、挑戦することも好きだ。自分自自身の挑戦に囚われてしまった。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
K: 最も恐れていることは?
ヴェンゲル: 身体的に自立できなくなること。動けることが嬉しいし運動も好きだ。(それができなくなるのは)本当に怖い。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
K: 誰かに許しを請うとしたら?
ヴェンゲル: 苦しませた人全員。仕事では一方で人を喜ばせ、他方で人を罰するような決断をする。25人のスカッドでは毎週土曜と火曜には14人に仕事を与えられない。あとは、潜在的な才能を引き出す手助けができなかった選手たち。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
K: 職業を誰かと変えられるとしたら?
ヴェンゲル: 人の人生にポジティブな影響を与えられる誰か。政治家か革命的な治療法を発見する人。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
K: 誰にも見つからずに一晩過ごせるなら誰と?
ヴェンゲル: モーゼと過ごしてみたい。十戒の時にどう考えたのか?十戒は実質的な最初の人類の憲法だ。よくできている。彼はどう考えていたのか?(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
K:サッカー界にいなかったとしたら?
ヴェンゲル: 何か競争する世界に。戦うことが好きだ。競争者にも負けず嫌いと勝つのが好きなタイプと2種類ある。両方とも持ち合わせているものだが私は負けず嫌いだと思う。一般的に、勝つのが好きなのは攻撃手で、負けず嫌いはDFだ。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
K: アルザス出身じゃなかったとしたら?
ヴェンゲル: アルザス出身じゃないとしたら、結局は世界市民だね。私は国境にこだわりはないよ。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
K: 33歳で監督になったのはコーチングを受けられなかった反動?
ヴェンゲル: 選手としてのキャリアがはかばかしくなかったから、自分が監督になる素質があるとは思わなかった。威厳もないと思っていた。寧ろ周囲の人が自分を見出してくれて監督になった。自分にはわからなかった。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
外国人監督について
K: PLに外国人監督として来たのは驚きだった?
ヴェンゲル: イエス。イングランドでは外国人は成功しないと思われていた。なって欲しくなかったから、外国人監督が成功しない理由は山ほどあった。「厳しい」と。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
ヴェンゲル: 私は日本からこっそりやって来た。日本は好きだった。ヨーロッパに戻れるのは嬉しかったが、もしもうまくいかなかったら日本に戻ろうと思っていた。(football london)
— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
K: 英国のタブロイドとの関係はどうやって凌いだ?
ヴェンゲル: 彼らは作り話をする。嘘ばかりだ。監督業は公と対峙する仕事で常に注目を集めるし噂も立てられる。とにかく自分の仕事に集中して噂や嘘は流れるがままにしておくことだ。根拠がない噂はそのうち消える。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
K: イングランドサッカーを変えましたが、どのように?
ヴェンゲル: サッカーを好きになるように仕向けた。子どもは楽しくてサッカーをするが、それが仕事になると「せねばならない」となってくる。私は、いつでもプレーしたいと思う気持ちを育てるようにした。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
無敗優勝の秘訣
K: 無敗優勝の秘訣は?
ヴェンゲル: 02年に無敗優勝が夢だと言ったら冷やかされた。選手からも「プレッシャーのかけすぎだ」と言われた。だが「無敗優勝できると真剣に思っているから言った」と伝えたら実現した。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
ヴェンゲル: これで2つのことがわかった。一つは、人は高すぎる目標を恐れるがあまり設定しないものだが、できる限り高く目標を掲げるべきだということ。もう一つは種を植えたら、育つまで待つ必要があることだ。(football london)
— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
ヴェンゲル: 人というのは現状に満足しがちだ。チームは常に新しい目標を必要としていた。人は易きに流れがちだが高みに昇ろうとするなら痛みをともなう。「何を目指しているのか?どこへ行こうとしているのか?目標は?」と意識して問うていないと停滞する。(football london)
— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
ヴェンゲル: これはスポーツエリートの考え方ではない。パーソナリティの専門家によれば、動機は強さが問題ではなく、継続することが重要だ。粘り強さだ。月曜から日曜までやれる人だ。火曜から木曜までではない。(football london)
— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
サッカー観について
K: サッカー観について教えてください。
ヴェンゲル: スタイルを持って勝つこと。プレースタイルのクオリティが行き着くところが勝利であるべきだ。ピッチで自分をどう表現するか。土曜日に勝たなければいけないと皆言ったが、監督としてそれはわかっている。だが、どのように?(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
ヴェンゲル: 私は、私のチームが試合をすることで、ファンに変わらぬ日常とは違う美しい世界を体験してもらいたい。試合を見に来て興奮してもらいたい。この願いを持たずに監督はできない。サッカーで人を喜ばせたいと思わなければいけない。(football london)
— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
よいコーチとは?
K: よいコーチとは?
ヴェンゲル: スカッドの力を引き出せる人。タイトルをとる人がベストなわけではない。これは誰にも決められないものだ。その監督がスカッドの潜在力をフルに引き出したかは誰にも測れない。だから私の究極の野望は無敗優勝だった。それ以上の優勝の方法はない。(football london— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
ヴェンゲル: 監督業には3つの要素がある。一つはプレースタイルと結果。二つ目は選手個人の成長。三つ目はクラブを作る構造と価値観。これはモラルに対する責任感と自分の価値感にかかってくる。グローバルな規模でクラブに新しい顔をもたらすことになる。(football london)
— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
サッカーにおける価値観
K: あなたのサッカーにおける価値観とは?
ヴェンゲル:チームスポーツの全ての美を見つけること。集団の中で自分を表現する。個人主義を超えて喜びを分かち合う。共に美を表現することは一人での表現よりも美しい。同僚を、相手を、ファンを、審判をリスペクトする。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
ヴェンゲル: さらに大事なのは凡庸にならないことだ。自分に求め、現状を受け入れず、寛容であり、人に分け与える。(football london)
— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
犠牲にしてきたもの
K: 人生において何を犠牲にしてきた?
ヴェンゲル:全て。周囲の人を傷つけてきたことに気づいた。家族、近しい人たちをないがしろにしてきた。だが、取り憑かれた人間は愛してやまない獲物のために我儘になるものだ。多くを気にしない。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
ヴェンゲル: アンリやヴィエラは才能がある。賢いしサッカーをわかっている。技術もある。だが彼らは犠牲にすべきものを犠牲にできるか?監督になればサッカーが常に昼夜頭から離れなくなる。朝の3時に目が覚めてスタメンや戦術、フォーメーションについて考える…(football london)
— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
今後について
K: アーセナルでの22年の後、アーセン・ヴェンゲルの今後は?
ヴェンゲル: 同じ問いを私もしてるよ!これまでやってきたことを続けるか、これまでの知識の蓄積をシェアするか。今後の数ヶ月で答えを見つけたい。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
思い出深い選手
K: 最も印象強い選手は?
ヴェンゲル: 私が指導した中でも最も才能があった選手… 多分ティエリ・アンリだろう。K: 殴りたいと思った選手は?
ヴェンゲル: あー、沢山いる。大試合で大きなミスをした選手全員。名前は言わないよ。彼らは私よりも力が強いからね。
(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
K: 絞め殺したいと思ったジャーナリストは?
ヴェンゲル: いないね。
K: いない?
ヴェンゲル: いない… まあ、クリスティーヌ・ケリー(注:この番組のホスト)かな。
K: (笑)
(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
K: OK、OK。一番ハッピーだった試合は?
ヴェンゲル: 全盛期だったバルサに勝った試合だろう。彼らは最強だった。あの時の両者のサッカーは別格だった。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
K: 誰の獲得を一番誇りに思う?
ヴェンゲル: 安く獲得してトップクラスになった選手。トゥーレ、アンリ、キャンベル、アネルカ。
(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
K: 最悪の補強は?
ヴェンゲル:そりゃ、沢山いるよ! 補強は複雑な仕事だ。加入選手の価値を測る。頑固過ぎてもダメで、押しも重要。ミスに気づいても前に進むしかない。ミスを恐れてはいけない。
(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
ボスにとってのパーフェクト
K: あなたにとって戦術的、身体的、能力的に完璧な選手とは?
ヴェンゲル: 完璧な選手はいない。皆、欠点がある。メッシは他者の良さも引き出せて自分でも点を取るほぼ完璧な選手だが彼にも弱点はある。空中戦は弱いし守備もうまくない。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
ヴェンゲル: 弱点ではなく強みで勝負しないといけない。コーチはできる限り強みを高めるようにし、その選手の弱点をカバーするような人を周囲に置く必要がある。(football london)
— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
フランス代表監督のチャンスはあった?
K: 2010にアーセナル監督じゃなければドメネクの代わりに仏代表監督になっていた?
ヴェンゲル: ああ、代表監督になる機会は何度もあった。ドメネクの前か後かはわからない。両方かも。だが私は毎日の監督業に興味があった。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
ヴェンゲル:代表監督になるべきかは自分に問い続けている。代表は試合が年に10日しかない。クラブなら60はある。次の試合が私にとっては薬だから…(football london)
— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
PSG監督のチャンスは?
K: アーセナル監督じゃなければPSGを率いていた?
ヴェンゲル: かもね。
K: そうしたらPSGはもう既にCL優勝していた?
ヴェンゲル: そうは思わない。PSGは巨大な企業の真っ只中に位置する。目ざすものはCL優勝ではないはず。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
ヴェンゲル: CL優勝はクラブ内の成長と努力の結果ついてくるものだ。このレベルのタイトルは追っかけるのは現実的ではない。同レベルのクラブが6〜7あるのだから、運の問題だ。(football london)
— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
控え室での秘密
K: 控え室での秘密を教えてください。どんなことを話す?
ヴェンゲル: 状況に応じて話をすることが大事。相手も、チームのエネルギーレベルも常に異なる。チームの状態はよく理解する必要がある。(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
K: 例えばチーム状態が悪い時、何を試合前に話す?
ヴェンゲル: この状態は受け入れられない。控え室でこれでは結果もひどくなる。目標が達成できない。目を覚ませ。おい、そこのお前、ウォームアップを見ていたが準備ができてない。これから何をするかわかってるか?準備はいいか?(football london)— mygunner (@mygunner98) 2018年7月17日
一言一句響き渡るボスの一問一答…
いかがだったでしょうか。
一夜を共にしたい相手がモーゼとか、もはやボスだからこその哲学者然とした名(迷)回答にはニヤニヤするバカリだし、
「種を植えたら、育つまで待つ」と語るボスの「潜在的な才能を引き出す手助けができなかった」という選手たちに対する謝罪の言葉、そして「最大の過ちは22年間居続けた事。自分自自身の挑戦に囚われてしまった…」と懺悔する姿にボスの人間らしさが垣間見えて、改めてアーセナルで良かったと、心からそう思った次第です。
現在「プレミアリーグは世界最高のリーグ」と言われています。
しかしそれは、「外国人監督は大成しない」と言われたこの”ムラ”に根気よく根を下ろし、全てにおいて真っ正面から真摯に向き合い改革を行った、このボスの礎なくして、ここまでのリーグ発展はなかったと思います。
そして「(イングランドサッカーを変えるため)フットボールを好きになるように仕向けた。」というボスの言葉…
ボス、フットボールを好きになったのは、決して選手やイングランド国民だけではありませんよ。
ここまで好きにならせてくれて、ありがとう。
翻訳: mygunnerさん / football.london
コメント
知性と情熱に彩られた言葉…
こんな上司がほしいな。
まるで『ゲーテとの対話』を読んでいるような素晴らしいインタビューでした。
自分に求め、現状を受け入れず、寛容であり、人に分け与える。覚えておきたいです。いい記事ありがとうございます。日本から応援してます。
ちょいちょい ジョブズとかと同じことを言ってるんだよな、やっぱボスは動機付けの天才。
大抵のリーダーは「How to」ばかり。
永久保存版っすわ、猿さんナイスー!
明日の仕事も頑張れる!
アーセナルのボスではなくなった今でも、アーセン・ヴェンゲルへの尊敬の念は変わりません!
なんの因果か、この人とこの人が率いたクラブと出会うことができて幸せだ
アーセン・ヴェンゲルに最大の敬愛を。
スクショして心に保存する言葉がいくつもありました!
ボスのような人に出会えて良かったです!
次のチームでも成功する事を願ってます、
[…] んのボス新訳は、このブログにもアップさせていただいておりますので、まだ読んでないよーって人は是非! 「最大の過ちは22年間居続けた事」哲学者アーセン・ヴェンゲル、人生を語る […]