エジルが代表引退宣言です。
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エジルが代表を引退することをSNSで発表しました。
しかしそれは…いわゆるドイツ代表との決別宣言ともとれる内容でした。
The past couple of weeks have given me time to reflect, and time to think over the events of the last few months. Consequently, I want to share my thoughts and feelings about what has happened. pic.twitter.com/WpWrlHxx74
— Mesut Özil (@MesutOzil1088) 2018年7月22日
II / III pic.twitter.com/Jwqv76jkmd
— Mesut Özil (@MesutOzil1088) 2018年7月22日
III / III pic.twitter.com/c8aTzYOhWU
— Mesut Özil (@MesutOzil1088) 2018年7月22日
以下内容です。
1. エルドアン大統領との写真
この数週間、ここ数ヶ月間に起った出来事について、色々と想いを巡らせた。自分が何を考え、そして何を感じたのか、みんなにも知って欲しいと思う。
ひとつの国でない、複数の国にルーツをもつ人々はたくさんいる。僕もその中の一人だ。ドイツで生まれ育ったけれど、家族のルーツはトルコ。だから僕には2つのハートがあるともいえる。ひとつはトルコ、そしてもうひとつがドイツだ。自分が子供の頃、母はいつもこう教えてくれた。自分のルーツを忘れず、常に誇りを持って生きていくんだよ、と。僕は未だその教えを胸に日々を歩んでいる。
今年5月、僕はロンドンでトルコのエルドガン大統領と会った。それは慈善活動の教育関連のイベントの式場だった。我々が初めて会ったのは、2010年ベルリンで行われたドイツvsトルコの代表戦、彼がメルケル首相と会ったときだ。それ以来、我々は度々世界の至る所で会う機会があり、交流が続いていた。
そしてドイツメディアに大々的に取り上げられ、問題となっているのがその時の写真だ。
Mesut Ozil says he would have been "disrespecting his ancestors' roots" had he not posed for photographs with the Turkish president.
Read👉https://t.co/YcNBhBKeFS pic.twitter.com/0Y6s3PbO4C
— BBC Sport (@BBCSport) 2018年7月22日
決して政治的な意図はなかった。けれど、嘘つきと責める人も数多くいる。
さっきも言ったけれど、僕は母に教わったように、自分のルーツ、祖先、そして彼等が遺してくれたものについて、常に忘れないよう心がけてきた。大統領と写真は撮ったが、政治や選挙とは全く無関係のもので、それはむしろ自分の家族の国の最高位の人物に対し敬意を示しただけにすぎない。
僕の仕事はフットボール選手であり、政治家ではない。そしてあの写真はもちろん大統領への支持などでは決してない。実際我々は、いつも通りの、彼が昔プレーしていたフットボールの話をしただけなのだ。だが、ドイツメディアはそうは捉えていないようだ。
僕にとっては、大統領が誰であろうが全く関係ないことで、大統領に会わないという選択肢は、むしろ僕のルーツや祖先に対し敬意を評さないということになる。エリザベス女王も、イギリスのメイ首相だって、エルドランを手厚く歓迎していたじゃないか。トルコの大統領だろうが、ドイツの大統領だろうが、全く同じ事をしていたと思う。
これが理解しがたいものだということはわかる。ほとんどの国で、政治家は公私混同されてしまうことが多々ある。だがこれに関しては全く違うと自信を持って言える。いつ何時でも選挙とは関係なく、同じように写真を撮るだろう。
2.メディアとスポンサー
僕はフットボール選手として、ブンデスリーグ、リーガエスパニョーラ、プレミアといった世界でも最高峰のリーグでプレーしてきた。そして幸せなことに、チームメイトやコーチ陣から、最高のサポートを受けてきた。と同時に、メディア対応も学んだ。
たくさんの人が、僕のパフォーマンスについての話をしてくれる。多くの賞讃、もちろん多くの批判もある。もし新聞や批評家が僕のミスを見つけたのであれば、当然受け入れる事は出来る。何故なら僕はパーフェクトなフットボール選手ではないし、なによりその批判はトレーニングのモチベーションともなる。しかし、受け入れがたい事もある。それは、一枚の写真をもとにドイツメディアが非難に終始したことだ。
一部のドイツ紙は、僕のバックグラウンドとあの写真を極右のプロパガンダに利用した。でないとすれば何故、ロシアでの敗北の記事にその写真と名前を載せるだけで、僕のパフォーマンスやチームのパフォーマンスの批判をしないのか。何故僕の出自を批判するのか。これはアンチそのものだし、越えてはいけない一線を越えてしまったように思う。
そして、もうひとつの失望。それはドイツメディアのダブスタだ。数日前、ローター・マテウス(ドイツ代表の名誉キャプテン)が某世界のリーダーと会っていたが、特に批判することもないし、説明を促す様子もない。彼はドイツの代表であるにもかかわらずだ。もし僕がワールドカップメンバーに相応しくないというのであれば、彼も名誉キャプテンの座を降りるべきではないか?僕がトルコにルーツがあるということでターゲットにしやすかったのではないか?そう考えざるおえないのだ。
僕にとってパートナーシップとは、良い時も悪い時も、常にお互いを支え合う存在だと思っている。先日生まれ古郷であるゲルゼンキルヒェンをチャリティのパートナーと訪れようとした時のこと。ここでは一年間、移民の子供や貧しい家庭の子供達がフットボールを通じ、社会のルールを身につけるプロジェクトがあり、そこを訪問しようとした直前、僕はパートナーから外されてしまった。さらに学校からも訪問するのは自重して欲しいという連絡が入った。今回の写真の一件から、様々な影響を恐れてのことだった。
さらには別のパートナーからも僕は外されてしまった。それはドイツフットボール連盟のスポンサーでもあり、今回の一件で全てキャンセルとなってしまったのだ。彼等の理由、ひとことで言えば「リスクマネジメント」とのことだった。しかしそんな会社が違法な製品を売りつけ、何百何千ものリコールを受けるとはなんと皮肉なことか。しかしこれに関し連盟は一切の口をつぐんでいる。これに対しては連盟はどのように考えているのか知りたいところだ。
先ほども言った通り、パートナーとは一蓮托生、良い時も悪い時も連携すべきだと思っている。そんな中、一緒に取り組んでくれるアディダス、ビーツ、ビッグシューには感謝しかない。彼等はしっかりとしたメディアリテラシーを持ち、プロフェッショナルな姿勢で取り組んでくれる。ワールドカップ期間中、ビッグシューと共にロシアで23人の子供達を救う手術を行った。それはブラジルや南アフリカでも行って来た事だ。これらはフットボール選手として大事なことのひとつだと思っているけど、こういった事を伝える余裕は彼らにはないようだ。
彼等にとっては僕がブーイングされたり、大統領との写真の方が面白い話題だからね。彼等にも資金があり、プラットフォームがあるにも関わらず。
3. ドイツフットボール連盟、グリンデル会長について
ここ数ヶ月、僕が最もフラストレーションを感じたのは、ドイツフットボール連盟、特にグリンデル会長の対応だ。エルドガン大統領との写真が報じられた際、レーヴ監督からは、すぐにでもベルリンに行き、説明した方がいいとアドバイスを受けた。その際、僕は自分のルーツ、そしてどのような経緯で写真を撮ったのかを説明したが、彼には全く響かなかった。それよりも、政治的な側面に興味があったようで、全く話にならなかった。しかしワールドカップ期間中だけはフットボールに集中することで合意した。それが開催期間中メディアの前で何も話さなかった理由だ。
同時期に、ドイツ大統領、フランク=ヴァルター・シュタインマイアーと会った。この会談は、僕とイルカイ(ギュンドアン)、そして大統領の3人で行われた。彼はグリンデル会長とは違い非常にプロフェッショナルで、僕のルーツや考えについて興味を持って聞いてくれた。そしてその会談の中で、共同で声明を出す事に同意した。しかしこの声明を自分達、フットボール連盟ではなく、大統領の広報主導で行われた事に対し、グリンデル会長は苛立っている様子だった。
当然と言えば当然だが、ワールドカップ予選敗退後、グリンデル会長はプレッシャーにさらされることとなった。彼は公の場でもう一度説明しろを迫ってきた。敗退の責任を僕のせいにするためにだ。僕はこれ以上、無能を絵に描いたような彼のスケープゴートになるのはもうこりごりだ。写真の一件の後、彼が僕を代表から外したがっていたのは知っている。堂々とツイッターでも言っていた。しかし監督のレーヴと代表マネージャーのビアホフが僕を守ってくれた。
グリンデルサイドから見れば、僕は、勝ったときはドイツ人で、負けるときは移民。そういうことだ。
ドイツに税金を払い、学校建設に寄付を行い、ドイツ代表として優勝したとしてもだ。2010年にはバンビ賞、2014年にはシルバーローレルリーフ賞(ドイツスポーツ界の最高名誉)、そして2015年にはドイツのフットボール大使まで任命されている。にもかかわらず、僕は未だにドイツ人ではないのだ。
友人であるポドルスキやクローゼは、ポーランド系ドイツ人とは呼ばれていない。しかし、何故僕はトルコ系ドイツ人なのか?トルコだから?イスラム教徒だから?ドイツで生まれ育ち、ドイツで教育を受けたにも関わらず、何故僕をドイツ人として受け入れてくれないのか。
会長と同じような考えは、至る所でみてとることができる。ベルント・ホルツハウアー(ドイツの政治家)は、写真の一件と僕のルーツに対し「ゴート・ファッカー」と言っていたし、ヴェルナー・シュテアー(ジャーマンシアター代表)は、「アナトリアへ帰れ!」と発言している。アナトリアとは多くのトルコ移民の出身地だ。何度も言っている通り、僕のルーツに対する中傷は既に一線を越えている。差別を政治のプロパガンダに利用するような人達は、即刻止めていただきたい。僕とエルドアン大統領の写真を人種差別のツールとして利用することは、社会にとってとても危険なことだと思う。
ちなみにスウェーデン戦後、ドイツのファンからは「フ*ックオフ!トルコのクソ野郎!トルコの豚!」と言われたけれど、前述した人達となんら変わらない事を言われたのも記述しておこうと思う。また僕や家族が受け取った、ヘイトメールや脅迫まがいの電話、そしてSNSのメッセージについても、もはや話したくはない。それはオープンではなかった昔のドイツを想起させるような、新しい文化に閉鎖的で、誇りを持つ事の出来ないドイツの姿ではないか。
ラインハルト・グリンデル会長。あなたには失望はしましたが、決して驚いているわけではありません。2004年、あなたがまだ国会議員だった頃、あなたはこうおっしゃいましたね。
「多文化主義というのは、幻想であり、まやかしにすぎない」と。
そして二重国籍と贈賄の法案に反対票を投じたあなたはこうも語っていた。ドイツ中がムスリムで蔓延していると。これは忘れる事は出来ないし、許しがたい事でもあります。
この度のドイツフットボール連盟、そして多くの人々から受けた扱いに、これ以上ドイツのシャツを着る事は出来ないという結論を下した。僕はもう必要とされていない人間のようであるし、2009年代表デビューして以降成し遂げた全ての事は忘れ去られてしまったかのようだ。人種差別的な考えを持つ人間が、世界最大の、二つの国にルーツを持つ選手を多数擁するフットボール連盟の顔となることは許されることではない。そんな人間が選手達の代表となることは到底認められない。
このような事を言うのは本当に心苦しいけれど、ここ最近の出来事もあり熟考に熟考を重ねた結果、これ以上ドイツの代表として国際舞台に立たないという結論に至った。人種差別のもとでプレーする事はもう出来ない。かつて僕はドイツのシャツに誇りとプライドを胸にプレーしていた。でも今はそうではなくなってしまった。これまで良くしてくれたチームメイト、そしてコーチのため、全力でプレーしてきただけに、この判断はとても苦しく難しいものだった。けれども、連盟の偉い人達からこのような仕打ちを受け、ルーツの蔑視、そして政治的なプロパガンダに使われるのであれば、もうこれで終わりにしたいと思う。僕はそのためにプレーしているわけではないのだ。とはいえ、この問題を右から左へと受け流すつもりもない。
人種差別はあってはならない。
メスト・エジル
以上が先生の代表決別宣言です。
これには、色々思うところがありすぎてねぇ…
まず整理すると、
問題の発端となったエルドアン大統領との写真。この問題を語る上で、そもそもエルドラン大統領とはどれほどの悪人なのか?というところがわからないと、何故ここまでこじれてしまっているのかがわからないと思う。
たかだか写真を撮っただけじゃないか?
おそらくドイツではそんな事では済まされない何かがあるんだと思う。
この辺は各自調査して欲しいと思うし、写真については軽率な部分もあったのかもしれない。
しかしだからといって、先生が敗戦処理のスケープゴートにされる筋合いはどこにもない。
そしてこのエジルのステートメントを読みながら、日本時代、よくしてもらったNさんの話を思い出しました。
Nさんとは仕事で知り合い仲良くなったんですけど、ある時からプライベートでもお付き合いさせてもらうようになり、よく刺しで飲むようになったんです。
そしてあるとき、飲んでる最中、彼がいつものようにニコニコしながらこう言ったんです。
「実はね、僕在日なんですよ。本名は李なんです」
ほうほう…
それまでそういった人と出会う機会もなかったし、前のめりで色々話を聞いていると、くしゃくしゃの笑顔でこう続けるのです。
「俺らね、日本ではこんな感じでしょ?でもね、韓国行ってもはじかれるんですよね。お前らなにしに来たんだ?半チョッパリ(半分日本人という差別用語)が!って。俺らほんと帰るとこないんですよね。だからよく兄貴と話すんですよ。俺ら国を持たないジプシーだなぁって」
そのとき自分は、どういうリアクションとったか覚えてませんが、ただただうなずいてたんちゃうかなぁって思います。
そしてこんな話も。
「うちらの親父は厳しかったですよぉ。今はまだマシですけどね、昔は今よりもっと差別とかバリバリあったんで、常にお前ら絶対に負けるなよ!って言われて育ちました。それで昔は俺もちょっとねぇ…」
と言って顔をくしゃくしゃにして笑うNさん。
そして日韓WC開催された2002年、「好きなチームはドイツ」と語るNさんに、
「あ、韓国じゃないんすね?」
とステレオタイプに驚く俺に、
「当たり前じゃないすか!なんであんな弱いとこ!ずっとドイツですよドイツ!」
と応えるNさんの笑顔を、これを読みながら想い出したのです。
ところで、イギリスでは小学一年生の前に準備クラスみたいのがあって、うちの5歳のSENAさんも近所の小学校に行き始めました。
エミレーツのハイバリー側じゃない方はクラスのナショナリティも多種多様でねぇ、カリビアンからトルコ、ギリシャ、ソマリア、中国と、純粋なローカルのイギリス人がほぼほぼ見当たらない学校。
そして、そんなマイノリティの中でもスクールカーストに準ずる、イジメとまではいかないけれどカラかいみたいのはあって、SENAさんもよくそのターゲットにされるわけです。
なんか棒みたいので叩かれたり、後ろから押されて転ばされて頭打って失神させられたり、この前なんか枝みたいので目さされてたなぁ…
でもそれはフィジカルの問題なんで我慢するんだけど、時折涙をこらえながら帰ってくる。
それは「自分がやってないことを自分のせいにされた」ということ。
英語が話せないから、全部自分がやったことにされて、でも反論が出来ないという悔し涙。
そんな時思わず言っちゃうんですよね。
「絶対負けんなよ!」って。
人間て、弱い人間ほど、弱い人間を見つけて叩きたがる。
だから強くなるしかないんだと。
はっ!と気づいたら、俺もNさんの親父さんと同じ事言ってるなぁと。
そしてそれは、「マイノリティ」という運命を受け入れた瞬間でもありました。
そして今回のエジルの代表との決別。
「多文化主義は難しい」
ということは根底にはあるんだろうけど、きっとどこの社会にもこういうことはあって、今回のように潜在的にドイツの中のマイノリティに対し排他的な人は必ず一定数いるだろうし、そのマイノリティの中でもなんらかのヒエラルキーはあるだろうし、LGBTだって、町内会だって、集落だって、どこまで掘り下げたってなんらかの標的となるような人達は必ず一定数いて、差別というものはなくならないものなのだと思う。
もちろん差別が無いものは理想だけれど。
で結局、何が言いたいのかって言うと、
どんなクソみてえな差別があろうとも、
アーセナル国民だけは全力でエジルをサポートするってことだよ!
ただそんだけ!
以上!
先生!Welcome back Arsenal!
コメント
エジルおかえりなさい。
あなたのホームはアーセナル。
そしてアーセナルとサポーターは必ずあなたを守ってみせる。
#istandwithozil
結局俺らが出来ることって、エジルお帰りなさい!俺らは全力でサポートするぜっていうのを示すだけですねー!
どっち側からも貧乏クジをひかされて、いいように利用されてしまいましたね。
胸糞悪い話です。
しかし、このご時世にドイツサッカー連盟会長がこれとは(苦笑
ネオナチ宣言ですやん。
黒人差別と違って、政治的な差別は、明確な理由を持って敵視するから、止めようっていうブレーキが効かなくなりがち。
せめて、クラブではサッカーを純粋に楽しんでもらいたい。
エメリ×エジルの化学反応は楽しみなんですよね。
今季から10番だし、トレイラも来たし、攻撃センス爆発させちゃってほしいです!!
メスト・エジルはアーセナル代表。
応援してます。クラブの宝。
にしても、ポルディはもちろんながら、ユリアン・ドラクスラーってええ奴やな。
ちょっとねえ、猿さん、こういうの勘弁してほしいんすよねぇ。。
泣けてしょうがないじゃないですか。。。
なんかもう、たまらんです。
ハーヴェイ・ミルクというゲイをカミングアウトしたうえでサンフランシスコ市議となり、最後には銃殺された方がいます。その方のコメントが頭によぎりました。
「もし一発の銃弾が私の脳に達するようなことがあれば、その銃弾はすべてのクローゼットの扉を破壊するだろう」(= もし私が暗殺されるようなことがあれば、それはこれまで隠れていたすべてのゲイの者たちをカミングアウトさせることにつながるだろう)
今回エジルに向けられた銃弾が、トルコ系ドイツ人だけでなく、世界中のマイノリティにとって、少しでも良い未来につながることを願っています。
もちろん、エジルがアーセナル国民である以上はずっと支える所存です。
今季はエメリのもと、エジルのハイパフォーマンスで優勝☆
ドイツのひとまず、だんまり、に期待。