ミキティがELアウェイに出れない!しかも決勝まで!?
というお話を、ちらっとさせていただいましたが、
俺たちのELドロー発表!しかしムヒタリアン出れない問題発生!?その理由とは?
なぜ、アゼルバイジャンでの試合に出れないのか!その理由に興味津々丸で調査開始しようとしたところ、我らがアーセナル国マニアジャーナリストのヤスコ先生が、かゆいところまで手が届くほどパーフェクツにまとめてくださっていたので、これはパク、いや、乗っかるしかない!ということで、このブログでもご紹介させていただきます。
ミキティは何故EL決勝に出れないのか!
とくと、ご覧あれ!
スポンサーリンク
ミキティがEL決勝に出れないワケ
ようやく自分の中でまとまったので、改めましてナゴルノ・カラバフとカラバフFKのお話をしてみようと思います。 #アーセナル国マニア
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
まずはファンミーテイングで話を聞いてくださった方向けにちょっと復習。あのときは、ムヒタリアンの国、アルメニアの紹介をする一環として、「アゼルバイジャン領内にナゴルノ・カラバフ共和国という、アルメニア人が作った事実上の国があり、その問題もあって両国の関係がよくない」という話でした。
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
「事実上の」というのは、ナゴルノ・カラバフ自体は独立を宣言しているのだけど、他国にほとんど承認されていないから。ちなみに承認しているのは、アブハジアと南オセチア(ともにジョージアから事実上独立)、沿ドニエストル(モルドバから事実上独立)という、やはり「事実上の」がつく3国のみ。
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
「他国から承認されていない国々にしか承認されてない国」って感じでライトにご紹介したわけですが…真面目な話をすると、ここに至るにはなかなかに壮絶な歴史があるわけですね。
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
そもそもこの辺りは、昔からアルメニアとアゼルバイジャンが領有権を主張して争っている地域。資源云々ではなく、お互いの文化・生活にとって大切な土地ということのようです。人口はアルメニア人のほうが圧倒的に多いけど、「それはわざと入植したからでしょ」というのがアゼルバイジャン側の言い分。
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
ちなみにアルメニア=キリスト教、アゼルバイジャン=イスラム教の国です。といってもこの争いは、宗教戦争というよりは民族意識の対立のようだけど。(アゼルバイジャンのイスラム教はわりとゆるやかで、トルコに近い雰囲気みたい)
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
そんなわけで20世紀初頭にも戦争があり、その後、ソ連によって半ば強制的にアゼルバイジャンの領土と決められた(アルメニア人には自治権を付与)ものの、アルメニア側は事あるごとにこの地域の自国編入をモスクワに訴え続けた経緯がある。80年代末の自由化あたりからその火種が再燃したというわけ。
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
ソ連末期の1988年あたりからは、住民同士の衝突から双方虐殺や破壊の応酬となり、民兵組織による攻防へとエスカレート。そのさなかの1991年にナゴルノ・カラバフ自治州で住民投票が行われ、圧倒的多数の賛成でナゴルノ・カラバフ共和国が独立宣言するんだけど、投票したのはアルメニア系の住民ばかり。
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
当然アゼルバイジャン側はこれを認めず、そんなところへソ連崩壊で旧ソ連軍の武器が流れ込んだりして、戦闘はますます泥沼化するっていう…1994年に停戦合意にはこぎつけるんだけど、結果ナゴルノ・カラバフ共和国は事実上独立、アゼルバイジャン系住民は国内難民として流出せざるを得なくなった。
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
フットボールクラブもまた然り。こうして本拠地を追われ、「難民クラブ」となってしまったのが、今回アーセナルが対戦するカラバフFKというわけです。ホームスタジアムがアゼルバイジャンの首都バクーにあるのに、クラブ名が「カラバフ」なのはそんな事情から。
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
カラバフFK英語版サイトトップには「アグダムを離れて(アグダムなしの)25年」という記事が置かれ、historyのカテゴリーには、"Never forget Karabagh"として戦争の記録がある。一つひとつの町について何年何月何日にどんな攻撃を受け、何人が亡くなった、負傷したということが事細かに書かれている。
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
カラバフFK英語版
Qarabağ Futbol Klubu
(ちなみにアグダム=Aghdamというのは、カラバフFC発祥の町、本来の本拠地の名前です)
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
25年間もホームタウンを偲び続けるとはどんな思いか…しかしアルメニアはアルメニアで、1988年には街が1個まるごと消滅するような大地震に見舞われ、さらにこうした戦争もあって、1991年にはGDPが42%減と大困窮しているんだよね…(その後自由経済にシフトしたこともあって成長を遂げたけども)
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
そんな25年前の戦争だけど、停戦合意は停戦合意のままで、問題は今も解決していない。直近では2016年4月、ナゴルノ・カラバフ軍事境界線付近で武力衝突が発生し,双方合わせて数十名の死者が出ている。日本の外務省が発表する危険情報によれば、ナゴルノ・カラバフは今も渡航禁止対象(レベル3)です。
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
ちなみにアゼルバイジャンも「十分注意してください(レベル1)」なので、試合を見に行く場合は要注意!といっても、カラバフFKのスタジアムはキャパ5800とかなので(ちっちゃ!)、まあそもそも難しいかな…
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
なお、アゼルバイジャンの法律では、ナゴルノ・カラバフに渡航するには政府の許可が必要なんだそうで、そんなわけで、ナゴルノ・カラバフに(アゼルバイジャン政府の許可なく)入国履歴のある外国人は違法扱いとなり、アゼルバイジャンへの入国はできないんだそうですよ。
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
長い話になったけど、アゼルバイジャンとアルメニアの間にはそういう事情があるわけで、アルメニア人であるムヒタリアンがアゼルバイジャンに入国できないとしても、それはもはや制度上しょうがないんじゃないかと思う。「サッカーに政治を持ち込むな」などと簡単に言えるレベルじゃないというか。
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
アルメニアがナゴルノ・カラバフのことを既成事実化しようとしている一方、アゼルバイジャンはまだまだ納得する気はない、という現状を考えると、アルメニア人に対する一部アゼルバイジャン国民の反発が大きいことも想像できて、ミキの身の安全への配慮も残念ながら必要なのかもしれないしね…
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
なかなかしんどい「自由研究」だったけど、こういう話に触れるのも、間違いなくヨーロッパのサッカーを追う醍醐味の一つだと私は思ってます。好きな選手の背景を知り、対戦相手の背景を知る。そして「知る」は「愛」だよ。(おわり)
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
おまけ ナゴルノ・カラバフこぼれ話
調子に乗ってナゴルノ・カラバフこぼれ話①「ナゴルノ」っていうのは「山地の」というような意味らしい。「ナゴルノ・カラバフ」だと「山岳カラバフ」ってなとこかしらね。
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
ナゴルノ・カラバフこぼれ話② 辛い話だったけど、実は現代のアゼルバイジャンは経済的にはイケイケで第2のドバイなんて言われてる。やっぱ油田持ってると強いんだね。ちなみにODA実績では日本がトップ。石油持ってる国とは仲良くしとかなきゃということか…
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
ちなみに現在のバクーはこんな感じだそうです。ふええー! https://t.co/hgxY4h7z7a
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
ナゴルノ・カラバフこぼれ話③としてご紹介しようとしてたのはまさにこれ!カラバフに入国した証拠が残ってるとアウトだけど、ビザがシールなので貼らなければ大丈夫というお話。なるほど配慮してくれてるってことなのか…ありがとうございます! https://t.co/kBQ41ttRnV
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
ちなみにナゴルノ・カラバフ戦争についてはウィキペディアのページも大充実の内容でおすすめ(途中から未翻訳だけど!)https://t.co/GLOURNHzVP 「黒い一月」あたりはそういえばうっすらと、アゼルバイジャンでソ連軍が市民を攻撃したというような話としてリアルタイムの記憶がある…
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
しかしアルメニア・アゼルバイジャン関連のページをいろいろ読んでるうちに、「南オセチア/アブハジア(ソ連崩壊後に独立宣言した国々)」を筆頭に、「世界の事実上の独立国」とか「バクーの世界遺産」、「ゾロアスター教の起源」と気になるテーマが次々出てきちゃってもう大変よ…
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
もう一つ言っておきたいことがあった!実は #アーセナル国マニア の「国マニア」には本家がございます。https://t.co/06JzLm2zRg すっかり忘れていたんだけど、今回、ナゴルノ・カラバフ共和国がこの本に載っていることを再認識。2005年初版の本なのでちょっと記述が古いけど、面白いよ!
— キムラ ヤスコ (@yskkimura) 2018年9月1日
今回まとめてくださった、国マニアジャーナリスト キムラヤスコ先生のTwitterはこちら
https://twitter.com/yskkimura
ヤスコ先生、あんたどんだけ暇…いや、最高なんだよ!
てか、なんですか、この情熱。。。
でも、先生がおっしゃるように、「知る」は「愛」。
この先生の情熱こそが愛の証であると、そのように受け取りました。
先生、ありがとうございます!
そしてミキティにおける複雑な民族問題。
アーセナルにおいては、てっきりジャカや親方周辺の「ユーゴ問題」だけだと思っていたら、ミキティにもあったのですね…。
「世界は未だ知らないことだらけ」であることを実感すると共に、アーセナルであるからこそ学べる歓びに、再び震えております。
ちなみに、カラバフFKのヴェニューはいまのところTBC(まだ未定)とのことで、もしかしたらなんらかのご配慮があるのかもしれませんが、
どこでやるにしても、一番はミキティの身の安全の確保だけを願ってやまないです。
世界は広いのだよ、世界は!
ELバンザイ!
筑摩書房
売り上げランキング: 63,004
KADOKAWA/角川学芸出版 (2014-08-23)
売り上げランキング: 243,760
彩図社
売り上げランキング: 415,368
コメント
ヤスコ先生ありがとうございます!
たいへん興味深かったです。
[…] 【必見】国マニア・ヤスコ先生の自由研究「ムヒタリアンがEL決勝に出れないワケ」 ミキティがELアウェイに出れない!しかも決勝まで!? というお話を、ちらっとさせていただいまし […]
[…] 【必見】国マニア・ヤスコ先生の自由研究「ムヒタリアンがEL決勝に出れないワケ」 ミキティがELアウェイに出れない!しかも決勝まで!? というお話を、ちらっとさせていただいまし […]
[…] 【必見】国マニア・ヤスコ先生の自由研究「ムヒタリアンがEL決勝に出れないワケ」 ミキティがELアウェイに出れない!しかも決勝まで!? というお話を、ちらっとさせていただいまし […]