突然ですが、質問箱からこんなご質問をいただきました。
かつてのフーリガン的なイングランド代表サポって、普段は普段で、どこかのサポなんですか?
だよね!知りたいよね!
というわけで、今回は自由研究シリーズとして「フーリガン」について調べてみました。
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「フーリガン」はどこのサポ?
今から19年前、2002年日韓W杯で日本中が盛り上がる中、それに勝るとも劣らないくらいニュースに取り上げられていたのが「フーリガン」。
テレビでも「イギリスから世にも恐ろしいフーリガンがやってくる!」というニュースが連日放送され、必要以上に警戒していた代表サポの方も多かったのではないでしょうか。
しかし始まってみればスタジアムで暴れる人たちは皆無で、今度は「イングランド人はみんなフレンドリーでした!イエーイ♪」みたいなニュースが席巻、なんとなくではありますが「フーリガンってのはいなくなったんだなぁ」なんてことを思った記憶があります。
確かにイングランドでも「フーリガン」という言葉は死語になりつつあるし、昔のようにスタジアムで大乱闘みたいなことはなくなりましたが(あっても小競り合い程度)、それでもまだ存在はしています。
基本揉めるのが目的のフーリガンです。決してサポーターとは呼べるものではありませんが(サポートしてないんだから!)、そんな彼らにも、心のクラブは存在するのです。
そんなイングランド・ロンドンの代表格がキング・オブ・フーリガンのミルウォール。次いでウェストハム、チェルシーです。
フーリガンとは何か?その語源と誕生の背景
フーリガンの語源は、19世紀のロンドンで非道の限りを尽くしていたアイルランド系一家の姓「Hoolihan(フーリハン)」を文字ったという説や、19世紀後半フーリガンボーイズと称するギャング集団が、イギリスで新聞記事となって広まったという説などあるようですが、はっきりとしたことはわかってはいません。
ただ、フーリガン誕生の背景には極右的ナショナリズムや性差別主義といったイデオロギーが存在していたようなので、アイルランド人を揶揄した「フーリハン」という名称だとしてもうなづけます。
そんなフーリガンですが、元々はフットボールとは無縁で、ただただ暴れるヤカラの総称でした。しかしその後フットボールと結びつくことで、皆の知る、いわゆる、試合会場で暴徒化する集団、となっていきます。
1960、70年頃から、各クラブには「ファーム(Firm)」と呼ばれる、ガチの構成員のみで作られた武闘派集団が組織されました。そんな彼らこそが「フーリガン」です。
試合の日ともなると彼らは敵地に乗り込み、ホーム側のファームの連中と抗争さながらの大乱闘を展開。古き良きイングランドフットボールリーグ時代は、スタジアムの外でも絶対に負けられない戦いが繰り広げられていたのです。
どんな抗争だったのかについては、当時のフーリガンを描いたフィルム『Football Factory』のオープニングシーンをご覧ください。
基本「ファッキン」のみで行われる会話はさておき、
スパーズ戦当日、チェルシーファームの集団がノースロンドンに乗り込むシーン。そこでの衝撃シーン。スパーズサポが巣食うパブに発煙筒を投げ込み、鶏たちがいぶり出されたところを皆でフルボッコ……
マイルドヤンキーもびっくりのタダの半グレ集団でした…
そんな集団にも立派なチーム名が付いています。悪目高きミルウォールは「F-Troop(のちに Millwall Bushwackers)」。ウェストハムはThe Inter City Firm (ICF) 。そしてチェルシーはその名も「The Chelsea Headhunters」と、実に絶妙。
ハイローの「山王連合会」「達磨一家」「鬼邪高校」…EXILEの人も、もうちょい見習ったほうがいいかもしれない。
はさておき、以上のように、彼らはクラブのサポーターでもなんでもなく、まごうことなきただのギャング集団だったのです。
そんな中でも最狂と呼び声の高い組織が、泣く子も黙るミルウォールの「F-Troop(Millwall Bushwackers)」。南ロンドンを根城に、圧倒的戦力で他を圧倒。特にハマーズ The Inter City Firm (ICF) との抗争は死人が出るほど激しく、今でも両者の戦いは厳戒態勢の中行われています。
そもそもミルウォールのホームスタジアムの愛称が「The Den(巣窟)」って時点でお察し。
もちろんトッテナムにもファームっていうか、そういう人たちがいっぱいいるんですけど、、、
ミルウォールにかかればこんな感じDEATH。。。
WATCH: Millwall fan punches man chanting anti-Millwall slogan after Tottenham matchhttps://t.co/2jGhuwHdnj pic.twitter.com/WqI1HKHrt9
— Standard Sport (@standardsport) March 12, 2017
「あの頃は良かった」フーリガン弱体化の理由
しかし「ヘイゼルの悲劇」を境に転機が訪れます。
ヘイゼルの悲劇とは、1985年ベルギーで行われたリバプールvsユヴェントスのUEFAチャンピオンズカップ決勝戦で、リバプールのフーリガンが暴徒化し、死者39人を出した国際的大事件。
その後リヴァプールは6年間、他のイングランドのクラブも5年間のUEFA主催の国際試合出場禁止を言い渡されます。
しかし一説にはピースフルな人間が多いKOPが暴徒化するのには違和感があるとして、この中にイギリスの極右団体、国民戦線 (NF)と関係のあるロンドンのクラブの人間が扇動していたのではとの噂もあります(あくまで噂)。
こんな噂が出るように、当時のミルウォールやチェルシーなどのクラブのファームは白人至上主義の人間で構成されており、中には先ほどの国民戦線 (NF)とツーカーだった人間もいたのでは?という指摘があるほど。
今から6年ほど前、パリの地下鉄で「黒人は乗せない」というチャントを歌ったチェルサポが炎上、その後スタンフォードブリッジ永久出禁を喰らっていましたが、そういった流れを汲んでいるサポがいてもなんら不思議ではないのです。
AUDIO: Train Incident Wasn’t Racist Claims Chelsea Fan http://t.co/9zz071Ddbp #CFC #PSG pic.twitter.com/tAY71p3Nh0
— Footballfan.zone (@Talk2Fanzone) February 19, 2015
とにかく、この「ヘイゼルの悲劇」をきっかけに、イギリス政府はフーリガン排除を目的とした「サッカー観戦者法案」なるものを可決。警察の取り締まりがより一層厳しくなったこともあり、徐々にフーリガンも弱体化していきました。
また彼らも歳を取り、元チェルシーファームの代表は「2部の頃は楽しかった。好きなことができた」と昔を懐かしんだり、
ミルウォールファンがガンに苦しむウェストハムファンの子供のために募金を集めたりするなど、時代の流れと共に彼らを取り巻く状況は変わってきたようです。
Millwall fans raise £27,300 for young West Ham fan battling cancer – Southwark News https://t.co/QAErv1rV0J
— Isla Caton (@islasfight) April 20, 2018
現在YouTube界隈でも、昔相当悪かった人がチャンネルを立ち上げ、昔の抗争相手と「あの時代は良かった」なんてことをやっていますが(瓜田夫婦は最高。特にカメラマン天才)、フーリガン界隈もそういう時代になってきたのかもしれません。
とはいえ、彼らの魂は未だ健在で、2017年ロンドンでテロが起きた際などは、ナイフ片手に「アッラーの神よ」と叫ぶテロリストに対し、「うるせー!俺はミルウォールだゴラ!!」とミルサポのおっさんがステゴロで飛びかかり、刺されながらも相手をフルボッコするという、彼らの母国愛ならぬ母クラブ愛を披露。
今でこそ国際舞台では鳴りを潜めている彼らも、国内では未だ謎の魂の炎を燃やし続けているのです。
もしかすると世代交代が行われ、今の若者の中にもフーリガンを名乗る子がいるかもしれません。でも、テロリストを前に同じことを出来る人間がいったいどれだけいるのか?
そういう意味では、「真のフーリガン」はもはや存在しないのかもしれません。
ところで、ロンドンでは「イングランドで怖いのは黒人ではなく、スキンヘッドの白人」という話をよく耳にします(俺の周りだけかもだけど)。
なんとなくその意味がわかったような気がした事件でもあるのでした。
アーセナルにもフーリガンは存在した
さて我らがアーセナルはというと、「The Gooners」と「The Herd」と呼ばれる二つのファームが存在しました。
ミルウォールやチェルシーのファームに比べると若干見劣りしたようですが(ぶっちゃけ全く相手にされていなかったようですが)、それだけ平和で牧歌的で、シンプルに名前だけの団体だったのかもしれません。
そのリーダーがこのDainton Connell(デイントン・コネル)さん。
プライベートではドミノダンシンでおなじみ「ペット・ショップ・ボーイズ」のボディガードも務め、1989年からツアーにも帯同するほどの人物で、その包み込むような大きな存在から、「クマさん」の愛称で親しまれていたようです。
「いたようです」と過去形なのは、既に彼は亡くなっているから。
2007年モスクワで交通事故に巻き込まれ、この不慮の事故により46歳の若さでこの世を去りました。
エミレーツ近くの教会で行われた彼の葬儀には3,000人が出席し、ペットショップボーイズも「Can You Bear It?」という彼に捧げるライブを行ったとのこと。彼がいかに慕われていたかがわかるエピソードです。
エミレーツに来られた方は、大砲前の小さなラウンドアバウトにある、このようなデコレーションを目にしたことがあるかもしれません。
何気なくスルーされたかもしれませんが、これこそが、デイントン・ザ・ベアー・コネルさんに捧げる追悼の花束。
ところで、その目の前にある公式ショップには、こんなクマちゃんも売られています。
これもきっと偶然じゃないような気がすんなぁ…
さいごに
そういえば、ウェストハムのファーム、The Inter City Firm (ICF)のトップも黒人でした。
アーセナルとハマーズってあんま揉めてるイメージないけど、根底には、なんかそういったことも関係あったりするんだろうか…なんてことを思ったり思わなかったり。
アーセナルのあるハイバリー周辺は移民の街です。近所にはギリシャ人ギャングが仕切るケバブ屋街があり、フィンズベリーパーク駅周辺にはモスクがそびえ立ち、俺の住むカウンシルフラットにも多数の黒人が出入るする、そんな街。
フーリガンという存在は絶対に美化しちゃいけないものだけれど、その根底には、俺みたいな上辺だけ見て喜んでる部外者には絶対にわからない、もっと根深いものがあるのかもしれない。
最終的にはそんなことに行き着いたフーリガン問題なのでした。
なんてマジで上辺だけ繕っただけの記事なので、次回は自由研究として、もうちょっとディグってみたいと思います。
また今回、色々調べるきっかけをくれた質問者の方に深く感謝いたします。
フーリガンのオススメ
フーリガンを知る上で参考映画としてオススメなのは、『The Football Factory』のスピンオフ、『The Real Football Factory』。
これはフーリガンOBに直でインタビューするっていうドキュメンタリーフィルムなのですが、フーリガンの現在の生の声を聞くことができる大変貴重なフィルムです。
この前までNetflixで放送していたのですが、既に終了しちゃっテタ…
残念!
もしどこかで見かけたらマストで!
それと興味深そうなのはこちら。
コメント
活動に敬意を表します。
言葉の暴力。人身売買の奨励。差別。これらを正当化することは決してできない。誰それを売却すべきか、などとまともな人間なら言えない言葉が飛び交ってる。ボールボーイまで差別主義者という現実は、私の心を折りそうになる。
彼らは新しい方法で、破壊をまき散らしている。私は彼らをネオフーリガンと呼ぶ。
アルテタはベンゲルの正統後継者か。其れはネオフーリガンと闘う意思があるかにかかっている。彼らに愛想を振る道化でないことを願っている。残念ながら今も彼らはアーセナルの中にいる。
ベニテス氏への脅迫。ついに行くところまで言った感じがします。サッカーファンは、あらゆる方法を取り,悪意の醸成を阻止しなくてはならない。その第一歩として、人身売買を奨励するマスコミに与しないことを提案します。度々すみませんです。
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