昨日のスミス・ロウの驚愕の裏切りに続き、アーセナル10番にまつわる The Athletic の記事です。
( The Athletic )
スミス・ロウの大いなる旅!どうぞご覧ください。
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アーセナルの10番とスミス・ロウの大いなる旅
すべてはデニス・ベルカンプから始まった。この飛ばないオランダ人は、アーセン・ヴェンゲル配下で先頭に立ち、アーセナルが真のフットボールクラブへ変貌を遂げるきっかけとなった。以来この番号は、アーセナルのスキルと創造性の道しるべとなる。
ベルカンプの前にNo.10を着用していたのはポール・マーソンだが、ベルカンプ入団とともに9番をつけることとなる。それまでも数々のナンバーを着用していたこともあってか、特に異論が出ることはなかった。いずれにせよ、ベルカンプ以前のアーセナルは10番との強い結びつきはなかった。
7番といえばリアム・ブレイディやデイヴィッド・ローカッスル。8番の男といえばイアン・ライト。9番はジョン・ラドフォードとアラン・スミスであり、11番はジョージ・アームストロングとチャーリー・ジョージだ。
だが、ほとんどのグッドオールドのアーセナルファンは象徴的な10番を思い出すことが出来ないのではないか。89年最終節、劇的優勝を果たしたアンフィールドでNo.10を着用していたのは、途中ベンチに下がったセンターバックのスティーブ・ボールドだった。
ベルカンプ以降、再びそれは課題となっている。その後10番を着用したのはディフェンダーのウィリアム・ギャラス。ヴェンゲル理論でいえば、あのベルカンプのナンバーを背負うということは過度のプレッシャーがかかるというもので、ワンクッション置かれた形だ。もちろんギャラスはキャプテンマークを着用しており実に説得力のある人物ではあるが、その後さらに説得力のあるファン・ペルシに引き継がれることとなる。
しかしファン・ペルシーはあえなく逃亡。神亡き後、ジャック・ウィルシャーがそのナンバーを継承したのだが、19番が彼のピークだったし、その後のエジルも11番の時の方が…
そしてエミール・スミス・ロウである。
アルテタは語る。
「彼は自ら(10番のシャツを)求めてきた。それは野心と欲望を示している。我々もそういうハングリーさのある選手を望んでいる。
その後、彼と少し話をした。彼はその(10番)意味を知っているし、心の準備も出来ているようだった。私たちも最大限のバックアップをしていきたい」
スミス・ロウはリーグ戦に22試合出場しただけの選手だ。
しかしファーストインパクトは凄まじかった。ボクシングデーのホーム、チェルシー戦にサプライズ出場し強烈な印象を残した。
それまでのアーセナルは、7試合でわずか2ポイントと実に悲惨な状況。10番エジルは登録外、シンプルに10番の位置に配置できる選手がいない状況でアーセナルは機能不全に陥っており、サイドに配置されたサカとティアニーに依存せざるをえない状況だった。
そんな中、このビッグロンドンダービーは、スミス・ロウの10番の資格を証明する素晴らしい機会となった。そして試合は3-1で勝利。これはスミス・ロウが非常にうまく機能した証拠であり、その後の試合でも彼はチームの中心となったのは紛れもない事実だ。しかしそれは決してスミス・ロウが10番だったからではなく、10番の役割を見事に演じたからである。
そんな明るい未来しかない若者を他のクラブが放っておくわけがなく、アストン・ヴィラは執拗にスミス・ロウに関心を寄せてきた。しかしその後「アーセナルはスミス・ロウを消耗品として使うだろう」という彼らの目論見は見事に外れ、アーセナルは彼に10番を与えると同時に新契約を結んだ。
さて、今後は、スミス・ロウ本人と(エヴァートンで10番をつけていた)アルテタの手腕にかかっている。
スミス・ロウは繊細でシンプルなプレーに優れている。頭を上げてボールを受け、抜群のタイミングで引き渡す事が可能だ。
しかし、魔法を使える気配は今のところ、ない。未だ20歳、当然といえば当然だが、10番にはそれなりの責任が伴う。想定外のことを期待されてしまうのはそれだけ大きなナンバーという事だ。
統計ウェブサイトWhoScoredを見ると、スミス・ロウには「極端な長所がない」とも見て取れなくもない。しかしこれが全てではない。あくまで狭い範囲内のサンプルであり、未だ20歳の若者だ。ただ今のところは、ベルカンプ、ファン・ペルシ、エジルタイプではないようだ。
似ている選手を挙げるとすれば、アレクサンドル・フレブ。
突破者というよりも、周りとの親和性を重視するファシリテータータイプ。もちろんそれは周りのプレイヤーとの組み合わせ次第ではあるが。
No.10、それはフットボールにおいて大きな意味を持つ伝説的な背番号。
エミール・スミス・ロウ 20歳、自らを証明するための大航海が、これから始まる。
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