我らがボス、アーセン・ヴェンゲルがプレミアリーグの殿堂入りです。
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アーセン・ヴェンゲル 監督として初のプレミア殿堂入り
この度元アーセナル監督、アーセン・ヴェンゲルがプレミアリーグの監督として殿堂入りを果たしました。
今回殿堂入りしたのは、ボスと長年のライバルであったマンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソン。
プレミア初期を支えた二人の偉人が揃って殿堂入りとなりました。
ちなみに今回の殿堂入りは、監督としては初となる最高の栄誉です。
ボスのコメント
「プレミアの殿堂?それは嬉しいよ、あぁ。嬉しいですよ。
お客さんには、常々特別なものを持って帰ってもらいたいと思ってたし、まぁ殊更いい弟子に恵まれたよな。そういう意味でも、俺も常にパーフェクトなものをお届けしたいと思ってたから、うん。
この団体を愛し、この団体の価値観を尊重し、そして育んだ人間として名を残せたのは、俺も殊更嬉しいですよ」
「Arsène Who?からThe Invincibles」アーセン・ヴェンゲル22年の軌跡
アーセン・ヴェンゲルの22年は、ある意味プレミアリーグの記録と言っても過言ではありません。
アーセン・ヴェンゲルの偉大なる功績
就任翌年、ヴェンゲルの代名詞ともなるアタッキングフットボールで、クラブ史上2度目となるプレミアとFAカップのダブルを達成。そしてこのプレミア優勝は、イギリス人監督以外では初。
さらに03-04に達成したアンリ、ベルカンプ、ヴィエラ、ピレスらの「The Invincibles」による全試合無敗優勝は未だ破られていない偉業。リーグ優勝後も無敗を続け、その無敗記録は49。
それを歌ったチャントが「49 UNDEFETED(49戦無敗)」ですが、これを俺が初めて聴いたのは、ノーロンダービーアウェイのWHLだったような気がするなぁ…
勝利の後、ガラッガラのスタジアムで、グーナーだけが一切帰らずずっとこれ歌っテタ。
Arsene Wenger combined longevity with success to manage more #PL matches than anyone else 👔#PLHallOfFame pic.twitter.com/tF3yBvAOPz
— Premier League (@premierleague) March 29, 2023
そんなヴェンゲルは、97-98、01-02、03-04と3度のリーグタイトル、また最多優勝となる7度のFAカップ、7度のコミュニティシールドを獲得しました。
「選手はパスポートで選ばない」イングランドに風穴を開けたヴェンゲル
今でこそ世界中のスーパースターの見本市の様相を呈しているプレミアリーグですが、いち早く世界に目を向けたのもヴェンゲルが初の監督でした。
もともとイングランドのフットボールリーグは「イングランドの、イングランドによる、イングランドのためのリーグ」と言われてもしゃーないほどドメスティックなリーグでした。監督も選手もほぼほぼイギリス人で、当然戦術もイングランド風。
「ボールが頭上でラリーしている」
ボルトンでプレーしていた中田がこう語るほど、パスを繋ぐではなく、とにかく放り込むサッカー。
そんな古風なイングランドに風穴を開けたのがヴェンゲルでした。
「選手はパスポートで選ばない」という信念のもと全世界にスカウト網を張り巡らし、世界中から才能を発掘。いっときは、全選手の国籍が違うイレブンがピッチに立ったこともあるほど。
俺の敬愛するベントナ男爵やエブエ、ぽんこつデニーの加入など、ボスなしでは決してありえなかったのです。
One nil to the Arsenal と ヴェンゲルの戦術革命
90代初頭、アーセナルは各所において、
「Boring Boring Arsenal(くっそつまんねぇアーセナル)」
というチャントでディスられていました。
ヴェンゲルの前任だったジョージ・グラハム時代の戦術は「1点奪ってガッチガチに護る」というもので、今の夢のような明るく楽しいアーセナルとはうって変わり、死ぬほど退屈なフットボールを展開していました。
そんな時グーナーの間で歌われたのが、今でもおなじみのこのチャント。
「One nil to the Arsenal(1-0でアーセナル)」
これこそが「Boring Boring Arsenal(クッソつまんねぇアーセナル)」に対するグーナーのアンサーソング。
最近アーセナルを見られた方は、この歌を聞いて「おれたち一点とったどー!!」ってただただバカ騒ぎしてるだけだと思っているかもしれません。
が、実は違います。
この短い1小節には、
「くっそつまんねぇ俺たちのアーセナルは、1-0っていうしょっぱいスコアで勝っちゃうんだよなぁ。そこに負けてるおたくらマジヤバくね?」
という自虐的なメッセージがぎゅうぎゅうに詰め込まれているのです。
チャントは基本シニカル。どこかにクスッと出来る要素が必ず含まれている。実に皮肉好きなイギリスらしい文化だと思いますが、故にチャントは奥が深く、愛に溢れているのです。
それと、俺もしょっちゅう言ってるけど、イングランド人って天才ラッパーなんですよね。フリースタイルの天才。何か言われたらチャントで倍にして返す。しかもそれを即興でやったりする。もはや国宝級の団体芸だと思う。
そしてそんな「Boring Boring Arsenal」に命を吹き込んでくれたのが、このアーセン・ヴェンゲルなのです。
今や当たり前となった、パスとポゼッションを重視するアタッキングフットボール。しかし当時において革新的だったこの戦術を真っ先に採用し、自らの哲学と情熱で、アーセナルを世界一魅力的なクラブへと変えていったのです。
そして就任翌年早速ダブル。
そらぁもうグーナーにとっては命の恩人。サポがボスを愛してやまない理由の一端がおわかりいただけたのではないでしょうか。
食事・トレーニング改革
改革は戦術だけではありません。選手の食事やトレーニングの管理を始めたのもヴェンゲルが先駆者です。
当時の選手は飲酒喫煙が当たり前。試合後はパブで選手とサポが口論みたいなことも普通にあったようです。
また、フィッシュアンドチップス揚げ物万歳のイングランド。当然食事も不摂生。最高のパフォーマンスを出すには程遠い食事をしていたわけです。
そこでヴェンゲルは栄養士を呼び寄せ、食事を徹底管理。禁酒禁煙はもちろんのこと、お菓子なども全面禁止に。
「マーズバー」っていう致死量の糖分が含まれた超絶甘いチョコレートがあるんですが、
「これも禁止にされた!ギギガガガ!!」とライト師匠も嘆いていました。
でもアル中だったトニー・アダムスが、リーグ優勝を決定づけるゴールを決めるほどの復活を遂げたのは、間違いなくボスのおかげといっても過言ではありません。
またコルニーに、最先端の素晴らしいトレーニング施設を作ったのもボス。
そんなコルニー内は土足厳禁なのですが、これもボスが名古屋監督時代に素晴らしいと感じ、日本から取り入れた文化です。
そしてボスが乗っているのもレクサス。
未だボスの中には日本の血が流れているのです。
エミレーツ建設
収容38,000のハイバリーから66,000キャパのエミレーツへの移転を推進したのもヴェンゲルでした。
これはまさに、未来への投資でした。
いずれどこかで頭打ちになるであろう収入、さらに来たるべきプレミアバブルを想定しての一大プロジェクトの成功も、アーセナル立て直し同様の偉業だったと言えるかもしれません。
もちろんその借金のせいで長らく選手を獲得することは出来ず、毎年のようにキャプテンが退団みたいな珍事があったわけですが、それでも4位CL圏内を確保し続けていたのは、ボス以外では到底無理!と断言。
あの毎年繰り広げられた鉄骨渡りは、今考えても奇跡です。
「Arsène Who?」から始まった物語
「Arsène Who?(アーセン、誰?)」
から始まったこの物語は、今も彼の教え子でもあるミケル・アルテタに引き継がれています。
アルテタの、いつ何時どんな時でも選手を悪く言わないという、あの選手を護る姿勢、そして試合に向けた情熱、哲学は、全てボスの闘魂を受け継いだもの。
そんなヴェンゲルは、後任の教え子にプレッシャーを与えたくないという理由から、退任後ずっとエミレーツから距離を置いていました。
しかし昨年12月末のウェストハム戦、ついにボスが約4年ぶりの帰還。
ボスがタイタントロンに映し出され時のどよめきと歓声は、未だ忘れられません。
そして「One Arsene Wenger♪」から「We’ve got Mik Arteta♪」へのチャントメドレー。
タイトルからは遠ざかっているかもしれないけれど、「歴史を紡ぐ歓び」はなにものにも変えがたいものだと、俺は改めて実感したのです。
そして4年ぶりとなるボスの帰還はきっと、「アルテタの独り立ち」を認めた証。
ボス、最終節、また遊びに来てくんないかなぁ…
そしてまたあのチャントメドレー、みんなで歌おうよ。
ボスがずっと死守し続けてくれた、夢のCL復帰のお祝いに。
ボス殿堂入り、おめでとう。
🎶 One Arsène Wenger 🎶pic.twitter.com/W8Bj1bIZjd
— Arsenal (@Arsenal) March 29, 2023
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