Arsenal 1-0 Mac City
Sun Oct 8 – 16:30 Emirates Stadium
スターティング: やべぇ!シーズン終わっちゃったから来季こそ更新する!
とろサーモン エディ 神の子
ジョル爺 こめお マーチン(C)
チェン子 ガブちゃん サリバ ベンホワ
ラヤ
■ゴール:
ガビー (86)
■ 交代:
46 とろサーモン → ガビー
75 チェン子 → 世界の冨安
75 ジョルジ → パーティ
75 エディ → 幅さん
■レフェリー: マイケル・オリバー
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この度ボリスタ様に奇行する予定だったシティ戦の原稿が機を逸したしまったため、ブログで成仏させていただきます。全く違うテイストですがお楽しみいただければ幸いです。
One Nil to the Arsenal という名の幸福
「One Nil (1-0) to the Arsenal !!」
試合終了後、アーセナルのホーム、エミレーツ・スタジアムにこだましたのは、この日のスコアを高らかに告げるアナウンスだった。
プレミアリーグ第8節、15/16シーズン以降7年間一度も勝てなかったマンチェスター・シティを破る大金星。
たかが一点、されど一点。
それは紛れもなく、アーセナルが一つの壁を乗り越えた、たったひとつのゴールだった。
思えば長い旅路だった。
2008年UAEの投資グループがオーナーになって以降、シティは莫大な資金力をバックに数々のスター選手を獲得。「アデバヨールがスター選手なのか?」という疑問は残るが、カルロス・テベスやダビド・シルバ、セルヒオ・アグエロなどの加入により、11/12以降は着実に成績を残し瞬く間にビッグクラブの仲間入り。
そして16/17シーズン、優勝請負人ペップ・グアルディオラの新監督就任によりその勢いはさらに加速。以降5度のリーグ制覇、2度のFAカップ、4度のリーグカップ優勝と、息を吸うように数々のタイトルを獲得。
特筆すべきは昨シーズンの成績。対陸空万能型AIロボットアーリング・ハーランドの加入もあり、リーグタイトル、FAカップ、チャンピオンズリーグを制覇し、わりとあっさりトレブルを達成。過去これを成し遂げたのがイングランドでは“マンチェスター・ユナイテッドのみ”であることからも、とんでもない偉業であることがお分かりいただけると思う。
しかしその一方で、奇しくもシティが中東に身を捧げたあたりから、アーセナルは冬の時代へと突入。「新スタジアム建設」という未来への投資に、アーセナルは自らの首を締め付けられることとなる。
油田を持たない我がクラブは財政的に火の車。目の前の借金返済に追われ、新戦力の獲得もままならないどころか、毎年のようにキャプテンが出て行ってしまうという非常事態。実際11/12にはセスク・ファブレガスが、その翌年もエース、ロビン・ファン・ペルシが神の啓示を受けチームを去るなど、もがけばもがくほど泥沼に沈んでいくアリ地獄状態。
そんな厳しい台所事情においても長年4位を死守し続け、16/17までチャンピオンズリーグ連続出場という至上命令を遂行してきたボス、アーセン・ヴェンゲルの手腕には改めて驚愕するばかりなのだが、ボスの功績は実はそれだけではない。それはボスが持つ未来を見通す慧眼である。
セスクがチームを去った2011年夏、ヴェンゲルは二人のベテラン選手を獲得する。それが現監督のミケル・アルテタと現アカデミー統括本部長のペア・メルテザッカーである。今にして思えば、これこそがアーセナルのターニングポイントであったわけだが、12年前、ボスは莫大な利益を生む新スタジアム建設だけでなく、未来の指導者というフィールドへも種をまいていたのだ。
そんなボスの申し子、ミケル・アルテタが救世主としてアーセナルに降臨してから早5年が経つ。その間クラブ内に山積した無理難題を解決しながら、昨シーズンは最後の最後まで優勝争いを演じ、残念ながら19年ぶりの優勝こそ逃したものの7年ぶりにチャンピオンズリーグに復帰。一歩ずつではあるが着実に前進している。
しかしそんなアーセナルでも、どうしても切り崩すことができなかったのがこのマンチェスター・シティだった。前述した通り、15/16以来7年間無傷の12連敗。文字通りの圧倒的鬼門。昨シーズン後半、優勝へのかすかな希望をポッキリへし折られたのもアウェイのシティ戦だった。
シティには魔物が棲んでいる。これだけ負け続けていたら何かのせいにしたくなるのは人間のサガというもの。とはいえ、実際前線には“金髪の魔神”が立ちはだかっているのは紛れもない事実。
SNSでは「ハーランドは立っているだけで反則」「宇宙人は出禁で」「とっととリーグ追放お願いします」等のコメントで溢れ、「ハーランド被害者の会」まで発足する始末。そんなハーランドだけでも脅威なのに、ここにペップのマネジメントが加わるのだから、これはもはやただのMUTEKIでしかないわけで。
しかし、我々も今季未だ無敗。さらにリーグ戦12連敗、であるとしても、コミュニティ・シールドで勝利した記憶が身体に染み付いてさえいれば、苦手意識も若干は克服出来ているはず!というささやかな希望はあった。
サポーターが信ぜずして、誰が信じるというのか。
今我々に出来ること。それは監督と選手を心から信じ、喉から血が出るほど声を出し、ヴェンゲルが創ってくれた要塞エミレーツに命を吹き込むこと。ただそれだけ。
それに呼応するように、選手たちも、先発・控え関係なく全身全霊をかけて闘ってくれた。
ワントップの大役を任されたエディが全力でタックルすれば、シティを追われたジェズスが完璧な身のこなしでサカの代役をつとめ、トロサールが左サイドを爆走する。
シティで偽SBを学んだジンチェンコがど真ん中で指揮をすれば、ノースロンドンダービーでの決定的なミスで戦犯呼ばわりされたジョルジーニョが、生まれ変わったように魅惑のパスを連発。
ホワイトが淡々とした顔で右サイドを通行止め。ガブリエウ、ライスが刈り取り、サリバがハーランドをポケットに入れる。そんなただでさえヒリヒリするこの試合に、GKラヤのエンタメ性溢れるプレーが彩りを添える。
そして普段貴公子と呼ばれるキャプテン・ウーデゴールが、泥臭いセオリー無視の動きでただひたすら全力で相手を追いかけ回す姿に、我々は改めて気付かされる。これはそういう仕合なのだと。そんなキャプテンの背中に引っ張られるように、エミレーツは何度も息を吹き返す。
最後は、救世主ミケル・アルテタの神采配。86分、後半投入されたパーティ、冨安、ハヴァーツ、マルティネッリ、4人のインパクターズによる驚天動地のイリュージョン。
それはしっかりと覚えている。
ゴールネットが揺れた瞬間、天を衝く大歓声の中で、これまでの7年間の出来事が走馬灯のように蘇り、内側から込み上げるえも言われぬ多幸感。人が死ぬ時というのはこういう感じなのだろうか……そんなことを漠然と考えながら、誰彼構わず肩を叩き満面の笑みで抱き合う。
俺はまだ生きてる。
いや、生き残った。
そしてこの瞬間のために、俺は生きている。
マンチェスター・シティ戦2015年12月以来8年ぶりの勝利を告げるホイッスル。
その瞬間、アーセナルの新たなアンセム「North London Forever」が流れ、エミレーツは歓喜の大合唱に包まれる。その大歓声にかぶせるように「One Nil (1-0) to the Arsenal !!」のアナウンス。
「One Nil (1-0) to the Arsenal」
意訳すると「アーセナルは1-0っていうしょっぱいスコアで勝つんだぜ」
これは1点を奪いそれをガッチガチで護り抜く、80年代後半から90年代前半の退屈だったアーセナルを自虐的に称える、アーセナルの基本哲学みたいなものだ。
そんな空前絶後に誇らしい「One Nil to the Arsenal」のチャントが、何度も何度もオレンジ色に染まったノースロンドンの空に吸い込まれる。
そして救世主ミケル・アルテタを称えるチャント。
We’ve got super Mikel Arteta,
He knows exactly what we need,
Kieran at the back, Gabi in attack,
Arsenal are on their way to the Champions League.
俺たちには最高のミケル・アルテタがいる
ヤツは何が必要か全て分かっている
キーランが守り、ガビーが仕留める
アーセナルは今、夢の途中
僕が観ているのは、アーセナルという壮大なドラマだ。
あの時ヴェンゲルがまいた伏線という種は、芽が出て、小さいながらも着実に実を結んでいる。
僕らは未だ夢の途中。
これで僕のアーセナルは、ようやくシーズン2に突入する。
P.S.
10数年前、シェフィールド・ウェンズデイの筋金サポの方から言われたこんな言葉を思い出す。
「アーセナルサポは不幸だ。一度負けただけで死んだように落ち込んで。俺たちは一度勝っただけで、優勝したみたいにお祭り騒ぎだよ」
同じような感情をもたらせてくれたマンチェスター・シティに心より感謝したい。
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